もの、一機はソビエト、もう一機は残念ながら所属不明、もう五機はわがドイツ機なることが判明した」
「けしからん奴どもだ。なぜ、本艇はそいつらを撃墜してしまわなかったのです。今後の本艇の使命遂行上、彼らはきっと邪魔をするに決っていますよ」
「それは考慮した。しかしわれらの統領は成層圏を離れるまでは、如何なる場合といえども、攻撃に出でざるよう命ぜられた。わしは、その命令に忠実であった」
 このとき僕は、大きな声で叫んだ。
「艇長。われらの統領と仰有《おっしゃ》ったんですが、それは誰です。本艇とどんな関係があるのですか。どうも僕だけが、本艇についてもこんどの冒険旅行についても、予備知識が一等貧弱なのです。どんどん教えてください。そうでないと折角のお役目が勤まらないから……」
 艇長は、にっこり笑って肯《うなず》いた。
「われらの統領の名前はいえない。仮りにZ提督《ていとく》ということにして置こう。この統領Z提督が、こんどの超冒険旅行の計画者であるわけだ。わしたちは、絶えず統領から助言をうけ、命令を受取っている」
「すると、その統領なる人物は、ドイツ本国にいるのですね」
「いいえ、ドイツの占領地帯である某高山地方におられる。そこには世界一の天文台と気象台と通信所などがある。尤《もっと》も統領は、時にベルリンへ出かけて、政府の首脳部と会談することもあるが……」
「その統領は、どういう理由で、こんどの宇宙旅行を計画したのですか。これはぜひともいってもらわにゃなりませんよ」
 僕は鋭く斬込《きりこ》んだ。
「そうだ、それだ。今日わしと諸君との会見の要点も、そのことにあると思う」
 と、リーマン博士は案外にも僕の申し入れを全面的に承諾して、
「但しこのことは今後一定の時期まで、報道は禁止とするが、大事な点だから、諸君は了解して置いてもらいたい。先に要点だけをいえば、われわれが棲《す》んでいる地球は今、われら人類だけによって支配されているが、それが近頃他から脅威をうけんとしているのだ」
「他とは何者ぞや」
 僕は黙っていられなくなった。
「他とは、目下のところ何物なるや不明である。しかし今もいったように、地球上の生物――もちろんわれら人類も総括してこれを地球生物というが、それではない他の何者かである」
「火星人というのが、ひところ喧伝されましたなあ」
 ベラン氏が、はじめて口を切る。

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