りに、タンポポの樹海のこずえ越《ご》しに巨大なラッパの頭のようなものが大小十何個、ぬっと出ている。まん中にあるものがいちばん太く、そのまわりに並んでいるものは外がわへいくほど細くなっている。ラッパだろうか。いやあんな大きなラッパがあるものか。では、煙突であろうか。煙突にしては、形がへんだし、あんなに一つところにあつまっている煙突なんて話に聞いたことがない。まるで、キノコ[#「キノコ」に傍点]がかたまってはえているように見えるそれは、まぶしく金色に光っている。
「あれは何ですか、カロチ教授」
 川上は、そばに立っている教授にきく。
「ああ、あれですか。あれはいま建設中の噴気孔《ふんきこう》です」
 教授は、大きな目玉をぐるっと動かして川上の方をみる。
「噴気孔ですって。それは何をするものですか。煙突ではないのですか」
「煙突ではない。噴気孔というのは、あそこから強いガスをふきだすのです」
「なんのためにそんなことをするのですか」
 ロケットじゃあるまいし、ガスを空へふきあげてどうするのであろうか。むだではないか。
「ロケットというものを知っているでしょう。あれですよ」
 教授のことばは意
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