わさないのであるから、気になって、しかたがない。
ポコちゃんは、じゅうぶんに気をつけて起きあがった。さっきはどうして滑ったのかわからないが、こんどは滑らないようにと用心をして、ゆかの上を一足ふみだした――とたんにかれは、またすってんころりんと滑ってしまって、そのいきおいで、ゆかの上を氷のかたまりのように滑って走って、戸口から外へ……どすん!
たしかに大地の上に、ポコちゃんはしりもちをついた。しかしおしりは、そんなに痛くはなかった。ふんわりとふとんのうえにしりをおろしたのと同じようであった。
ポコちゃんは、きょろきょろとあたりを見まわした。空は青く晴れて、高いところにあった。太陽はぎらぎらと照りつけて熱帯の太陽のようであった。ふりかえると、今までポコちゃんのいた家があったが、それは白いクリームでこしらえた、みつバチの巣といったような感じだ。
ポコちゃんは、もう一度じゅうぶんに用心をして腰をあげた。そしてしずかに大地に立った。そこでしばらく深い呼吸をして、気をしずめた。気がしずまったところで右足を高くあげた。まるで馬が前足をあげたように。それからその足をそっと垂直におろした。そのか
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