いへんやっかいであるが、そこがまた、たいへんおもしろいところでもある。
宇宙の墓場《はかば》だ
「おいポコちゃん。いよいよきたぞ、宇宙の墓場へ。このへんは、もう宇宙の墓場なんだぜ」
山ノ井は、となりの席でもう三時間もぐうぐうねむりつづけている川上を起した。
「うううーん。ああ、ねむいねむい。なんだ、もう食事の時間か」
「あきれた坊やだね。宇宙の墓場だよ」
「シチュウが袴《はかま》をはいたって。そいつはたべられないや、口の中でごわごわして……。ああ、ああっ。腹がへった」
ポコちゃんは目がさめると、おなかがすいたとさわぎだすくせがあった。山ノ井の千ちゃんは、あきれてしまって、とちゅうからもうだまっていることにして、しきりに暗視《あんし》テレビジョンのちょうしをかえながら艇外へするどい注意力をあつめている。
ああ、宇宙の墓場。
そこは重力平衡圏《じゅうりょくへいこうけん》というのが、ほんとうであろう。つまり地球からの引力と月からの引力がちょうどつりあっていて、引力がまったくないように感ぜられる場所なのだ。そこは、もちろん地球と月の中間にある。そこから月までの距離を一とす
前へ
次へ
全91ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング