植物はうんと生えているじゃないか。日本だって原始林があるし、焼けあとのほかはどこへいっても青々している。熱帯なんかへ行くと、まったく草木におおわれてしまって、植物の世界みたいだ。それを話せば、教授だって喜ぶよ。第一、ここから地球は近いし、第二に地球の上には植物がうんと生えていることは、ぼくたちが見て知っているのだから――」
「よし、わかった。それをいってみよう」
 二少年の話はきゅうにきまって、このことをカロチ教授にあって、くわしく話をした。
 教授は、「それは考えないでもなかったが、地球の植物は、われわれの欲しているものとはすこし種類がちがうんだがね」と少ししぶっていたが、その日一日よく考えてみると、返事をした。
 その翌日、教授はきげんのいい顔で二少年のところへやってきて地球へいくことにきめたといった。アフリカと南米とニューギニアに、自分たちのほしいものがそうとうあるから、それを採取した上で、またつぎの宇宙旅行を考えるのだといった。これを聞いて、二少年はとびあがって喜んだ。
「しかし心配なことがある。われわれは小さな乗物に乗ってならたびたび、地球へいったことがあるが、小なりといえども星を地球の上に着陸させることは一度もやったことがない。ようすによっては、星は着陸させないで、地表から百メートルぐらいのところへ碇泊《ていはく》させるかもしれない」
 教授はそんなことをいったが、二少年は地球へ帰れるうれしさで、そんな話を気にとめてもいなかった。

 ジャンガラ星が、すごいガスをふきだしてみずから旅行をはじめたときの光景は、ことばにも文章にもつづれないほどの壮観だった。それとともに、巨大なる三基のジャイロスコープがいきおいよくまわり出した。この器械によって、思うような方向へジャンガラ星を進めることができるわけだった。
 こうしてジャンガラ星は、刻一刻地球へ近づいていった。
 カモシカ号が不時着をしたときに、無線器械もテレビジョン装置もこわしてしまったことが、二少年にとってはたいへん残念なことであった。そのかわりなにか通信機を貸してもらいたいと教授にたのんだが、教授はそれをことわった。その理由ははっきりしないが、二少年や地球人を警戒したためかもしれない。
 事実、地球では大さわぎが始まっていた。とつぜんあやしげなる星がだんだん近づいて来、それはどうしても地球に衝突する軌道
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