このへんへ落ちてくるぞ」
まるで花火がうちだした紙製の人形のように、その人かげは風にのったまま、地面に対してななめにすうっと着陸した。と思ったら、とたんにごろごろと転《ころ》がりはじめて、約二十メートルを転がって、ちょうどポコちゃんの前まで来た。
ポコちゃんはあわてて相手をつかまえてやった。
「どこか、けがをしなかったかね」
と、相手に声をかけながらよく見ると、なんのこと、それはジャンガラ星人のカロチ教授であったではないか。
「川上君。くしゃみをするときは、こっちを向いてやらないで下さい。わしはもう呼吸がとまるかと思った。すごいくしゃみを君はするんだね」
カロチ教授は、三本の手でしっかりとポコちゃんの腕をつかみながら、うらめしそうにいった。
聞いているポコちゃんは、顔があつくなった。
「あなたを、くしゃみでふきとばすつもりはなかったんです。悪く思わないで下さい。あなたのからだは軽いんですね」
「君のくしゃみのいきおいがはげしすぎるのだよ。あっという間に、からだがくるくるとまわって、地上から千メートルも高い空までふきとばされちまったからねえ。ほんとにもうこれからは気をつけてくれたまえよ」
「はいはい。気をつけましょう」とポコちゃんはていねいにあやまった。
「しかしあなたのからだは、どうしてそんなに軽いのですか」
ポコちゃんは、えんりょのない質問をした。
「それは生まれつきだよ。ちょうど、君たち地球人が、いやに重いからだをもっているのと同じことさ」
カロチ教授は、大きな目玉をぐりぐりさせていった。
「なるほどねえ」ポコちゃんはうなずく。
「しかしぼくは、さっきから歩こうとして滑ってばかりいるんです。どうしたわけでしょう」
「そりゃ君が、あまり足に力を入れて歩くからさ。君はもっと歩き方を練習しなくてはならない。でないと、おもしろいところへ案内できないからねえ」
「なるほど」
ポコちゃんは同じことばをくりかえして、カロチ教授にうなずいてみせた。
「あなたはたいへん親切ですね。カロチ教授。そこでもっとおたずねしてよろしいですか」
「どうぞ。答えられることは答えましょう」
教授もポコちゃんも、道路の上にすわりこんでしまった。タンポポのおばけみたいな木のかげが長くのびて、かたむいた太陽がぎらぎらと光る。いやに日が短い。
「まず知りたいのは、こんなりっぱな星がある
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