るのか)
 と、小浜兵曹長は、背中がぞっとさむくなるのをおぼえました。
 だが、こんな魚に食べられてしまうのは、ざんねんです。なんとかここを逃げだす工夫はあるまいかと、兵曹長は壁をのぼるつもりで、ちょっと手をふれてみましたが、壁はぬらぬらしていて、とてものぼることはできません。さすがの勇士も、しょげていますと、その時、
「小浜さん、今たすけてあげますよ」
 と、とつぜん頭のうえで、おもいがけぬ声がしました。兵曹長はおどろいて立ちあがり、上を見上げました。そのとき、上から一本の綱がするすると下って来ました。


   生きていた帆村



     1

 おそろしい海底牢獄へ、とつぜん下された綱一本!
 兵曹長は、夢かとばかりにおどろきました。とにかく先のことはわかりませんが、これ幸《さいわい》にまずこの海底牢獄からぬけだしたがよいと思いましたので、綱につかまってどんどんあがりました。
 煙突のようにほそ長い海底牢獄を、綱をたよりにぐんぐん上へのぼっていきますと、もうあとすぐ天井にぶつかりそうなところに、一つの横穴があいていました。
 綱は、そこから下へおろされているのでありました。

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