人はそればかり考えています。
 ごとん。
 かすかに床がゆれて、うごいていた部屋はぴたりととまりました。
「ああ、とまった」
「うむ、とまったね」
 二人は、目を見あわせ、ほっと溜息《ためいき》をつきました。なんという思いがけないからくりが仕掛けてあったことでしょう。
「こんなエレベーターみたいな仕掛が、はやっているのでしょうかねえ」
 少年は、ふしぎでたまりません。
「さあ、どうだか、それは――」
 とまごついた大尉は、そのときになに思ったものか息をのみ、
「おう、あんなものがうごきだした。一彦君、君のうしろの、機械戸棚がうごいているよ」
「えっ」
 一彦がふりかえってみると、おどろきました。顕微鏡や気圧計などいろいろの理化学機械のはいった戸棚が、しずかに横にすべりつつ、壁の中にはいっていくのでした。
 二人は息をころして、ひとりでにうごいていく戸棚を見つめていました。
 戸棚のうごいていった後には、意外にも、一つの扉があらわれました。地下室の怪!

     4

 大利根博士邸の実験室が、塩田大尉と一彦少年とをのせて、まるでエレベーターがさがるように、すうっと下におちていったのさ
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