のでありました。
「八つざきにしてもあきたりないあの怪塔王だ」
小浜航空兵曹長は、墜落していく愛機を、やっと水平にもどすことができると、目をあげて怪塔ロケットの姿を空中にさがしました。ところが、頭の上は雲ばかりで、もとめる怪塔ロケットの機影はどこにも見あたらないではありませんか。
「ちぇっ、うまく逃げられてしまったか。いや、青江のかたきをとらないうちは、どんなことがあっても逃しはせんぞ」
兵曹長は、飛行の邪魔になっている麻綱を、くるくると機内にひっぱりこみました。そして、勇敢にもぐっと上舵《あげかじ》をとり、エンジンを全開にして、猛然と急上昇をはじめました。エンジンは幸いにも、たいへん調子がよろしいので、兵曹長は安心しました。
雲の中をぬいつつ、兵曹長の目は、あちらこちらにうごきました。雲が視界を邪魔していましたが、雲の切れ目に、もしや怪塔ロケットの姿が見えはしないだろうかと思ったのです。
しかし、敵の姿は、どこにも見あたりません。そのうえに、雲はいよいよ濃く渦をまいて来て、どこを飛んでいるのかわけがわからなくなりました。暴風雨のしらせさえ感じられます。
「ざんねんだなあ。こう
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