えだしたのを見て、機上の小浜兵曹長ははっと胸をつかれたようにおもいました。青江をここで焼け死なせてはなりません。といって、とおくはなれたこの機上から、青江三空曹の燃える服にまで手のとどくわけがありません。
「こまったなあ」
小浜兵曹長は、部下のこの危《あやう》いありさまをにらんで、ぶるぶると身ぶるいしました。なんとかして助けてやらねばならぬ。この様子では、青江の生命はあと十分ともたないであろうと、気が気ではありません。
「こまったなあ――そうだ、このうえは、おれも青江とともに死ぬんだ」
なにを考えたか、小浜兵曹長は座席のなかをのぞきました。彼は座席の下から、革のふくろにはいった飲水をとりだしました。この革ぶくろを腰にさげると、彼はバンドをとき、座席にぬっとたちあがりました。
彼はいそいで革ぶくろの上をナイフで切り、小さな穴を三つ四つつくりました。それからこんどは、革ぶくろの底を手ばやく紐《ひも》でゆわえ、その紐のさきを左の手首にしばりつけました。一体彼は、こんなことをしてなにをしようというのでしょう。
もちろんそれは、部下を助けるための一か八かのこころみだったのです。
小浜兵
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