をねらっています。
「おい小浜、わが機はもう全速力をだしているのだろうな」
「はい、塩田大尉、速力はもういっぱいだしております」
「そうか。はやく追いつかないと、夜になってしまう。すると、さがすのに面倒だ」
「は、こんどは何としても追いついて、体当りで撃墜したいものだと、私は考えております」
「うむ、俺も同感だ。俺はこっちの機体を怪塔ロケットの尾翼にぶっつけて、舵《かじ》をこわしてやろうと考えている。舵をうしなえば、いくら怪塔ロケットだって飛ぼうと思っても飛べないではないか」
「なるほど、それは名案ですな。よろしい、私はうんとがんばりますよ」
 塩田大尉はさすがに隊長だけあって、すぐれた考《かんがえ》をもっていました。しかし、相手の舵を体あたりでこわすのだと一口にいっても、じっさいこれをやるのはなかなかたいへんなことです。うまくいくでしょうか。
 怪塔ロケットは、急に頭を上にむけてぐんぐんと天にのぼっていきました。そうかと思うと、また急に舵をまげて南の方に走りだしました。するとまたこんどは急に上むいて、お尻をきりきりふりながら天にのぼっていきます。どこへとんでいくのか、一向《いっこう》にわかりません。まるでよっぱらいの足どりのようでありました。

     3

 怪塔が、よっぱらいの足どりのように、あっちへとび、こっちへとびしているのも、むりはないことでありました。なぜといって怪塔のなかでは、運転手の黒人が二人の怪塔王のめいめいにさけぶ、まるで反対の命令におびやかされて、あるときは天へ、またあるときは水平にと、めちゃくちゃにとびまわっているのでありました。
 そのうちにも怪塔はいつしか、太平洋の上に出ていました。
 夕焼の残りのひかりが、だんだんうすくなってきて、いまやあたりはとっぷり暮れようとしています。
 塩田大尉は、死力をつくして、空中の怪塔ロケットをおいました。怪塔ロケットがまごまごしているおかげで、塩田大尉機は、ようやくそのそばにちかづくことができました。
「もうすこしだ、がんばれ」
 塩田大尉は操縦員をしきりにはげましています。
「舵機《だき》をねらえ。こっちの車輪で、あの舵機を蹴《け》ちらせ」
 大尉のあとにしたがう各偵察機は、これも大尉の気もちをさとって、われこそ体当りで怪塔ロケットの舵をこわそうと、一生けんめいにおいかけています。
 そのうちに、
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