撃機隊の司令をよびだしました。
「はい、爆撃機司令です」
 塩田大尉は、マイクを手にとって、眼下に見える怪塔のありさまを知らせました。そしてすぐさま爆撃をするように頼んだのでありました。
「承知しました。すぐ全機で急行いたします」
「頼みましたよ」
 それからものの十分とたたないうちに、東の空から爆撃機隊の翼がみえてまいりました。両隊の無電は、しきりに連絡をはじめました。そのうちに打合わせは、すっかりすみました。
 爆撃機体は二隊にわかれ、いずれも四千メートルの高度をとり、怪塔の上にしずかにすすんでいきます。
 塩田大尉も、小浜兵曹長も、偵察機の上からかたずをのんで、その行動を見守っています。
 そのうちに先にとんでいる爆撃機隊の編隊長機がまず機首をぐっと下げました。あとの僚機《りょうき》もそれにならって、順番に機首を下にしました。急降下爆撃です。
 機体の胴中から、まっくろいものが五つ六つ、ぱっと放りだされました。爆弾です。
 爆弾は仲よく一しょにかたまって、ぐんぐん下におちていきます。
 第二番機の爆弾群が、またあとをおいかけて、ぐんぐん地上の怪塔に追っていきます。
 さあどうなるのでしょう。あと数秒で、いよいよ土をふきとばし、黒煙が天にまきあがる大爆発がおこる――と思っていましたが、ところが実際は、そうなりませんでした。まことに不思議、いつまでも爆発がおこりません。

     5

 怪塔の中には、「怪塔王と和睦せよ」という無電をうった帆村荘六もいるはずですし、一彦少年も一しょのはずです。それにもかかわらず爆弾を怪塔の上に落すのは、まことに気のすすまないことでしたが、帝国海軍に仇《あだ》をなす怪塔は、たとえ一日でも、一時間でもそのままにしておけませんから、それゆえ塩田大尉は、涙をふるって爆撃隊に爆弾を落すよう命じたのでありました。
 その爆弾が、下にぐんぐんおちていったきりで、そのまま音沙汰《おとさた》なしになってしまったものですから、爆撃員はすっかり面くらってしまいました。
「爆弾を投下したが、爆発しない!」
 と、妙な電文が、塩田大尉のところにとどきました。
「爆弾を投下したが、爆発しない――というのか。そんなばかなことがあってたまるか。なあ小浜兵曹長」
「はあ、わからんでありますな。爆弾が昼寝をしているわけでもありますまい」
 爆撃機六機の落した爆弾は
前へ 次へ
全176ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング