と上の方にとびだしました。
「あっ、とびだした」
「うむ、やったな――」
帆村と一彦は、いいあわせたように跳ねおきると、かたわらの小さな窓の鉄枠につかまって、一生けんめいに窓のそとをのぞきました。
さあ、そのとき二人の眼に、どんな光景がうつったことでありましょうか。
2
ごうごうと、ものすごい音をたてて震える怪塔の中!
その窓わくにとりすがって、外をのぞいた帆村探偵と一彦少年!
「ああっ、これは――」
と、はげしいおどろきの声が、二人の口から一しょにとびだしました。
窓の外の、まったくおもいがけない光景――ああこんなことがあってよいものでしょうか。そこに見えたものは、あの赤土の壁でもありませんでした。また二人が見なれた白い砂浜と、青い海原にとりかこまれた森の中の風景でもありませんでした。それはなにもない空でした。いや、なにもないわけではありません。白い雲が、あっちこっちにぽっかりうかんでいます。たったそれだけです。大地や海原はどこへいってしまったのでしょうか。
二人は、大地と海原とをみつけるのに、大骨をおりました。なぜといって、二人が窓わくに顔をぎゅっとおしつけて、むりをしてはるか下をながめたときに、やっとその大地と海面とが、まるで模様かなにかのように足下に小さく見えているのを見つけたのです。おどろいたことに、怪塔はいつのまにか大地をはるかにはなれていました。そして天へむかって、ものすごい速さでびゅうびゅう飛んでいくのでありました。
「一彦君、これはたいへんだ。僕たちはいま空中をとんでいるのだよ」
「えっ、空中をとんでいるの。やはりそうだったの。僕は頭がなんだかぼんやりしてしまった」
といったのも道理です。二人のとじこめられた怪塔は、いま空中を弾丸のようにとんでいくのでありました。今まで塔だとばかり信じていたのは、普通の塔ではなかったのです。空中を飛行機よりも早く走るといわれるあのロケット機であったことがわかりました。
3
いま帆村探偵と一彦とは、怪塔ロケットに閉じこめられたまま、思いがけない空中旅行をしています。
怪塔ロケットを操縦しているのは、いわずと知れた怪塔王です。
一たい怪塔王のほんとうの名前はなんというのでありましょうか。まだだれもそれを知りませぬ。
このロケットというのは、だいたい砲弾に尾翼を生《は》
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