、そこにいたな」
 魚油灯が大きくゆらいで、岩礁のうえに腹匐《はらば》いになっている帆村探偵をみつけました。
 もう駄目です。帆村探偵の一命は、風前の灯火《ともしび》も同様です。殺人光線が帆村の方にむけられ、そしてボタンがおされると、もうすべておしまいです。
 帆村が岩礁のうえに腹匐いになっていたのは、毒ガスからすこしでものがれるためでありました。下には荒潮がぼちゃんぼちゃんと岩を洗っていまして、そこにすこしばかりの風が起っていました。だから重い毒ガスは、下に溜《たま》ろうとしても、波のためにあおられ、吹きあげられてしまいます。そしてどこを潜《くぐ》って来るのか、一陣の風がすうっと吹いて来るのです。どこまでも沈着な帆村探偵は、こうしたわずかの安全地帯をもとめて、辛《かろ》うじて息をついていたのに、いまや大利根博士の持つ殺人光線灯が、最後のとどめを刺そうと狙っています。
 不意に帆村は、ぽんと蹴られました。
「あ、痛!」
 思わず彼は、声を出してしまいました。
「ふふふ、まだ生きていたか。いよいよ殺人光線灯を食《くら》って、往生しろ!」
「待て! 最後に、ちょっと聞きたいことがある」
「なんだ。早く言え」
「貴下は大利根博士ですか、それとも怪塔王ですか」
「そんなことは、どっちでもいい。ほら、もう念仏でも唱えろ」
 もう余裕はありません。帆村の体は、ごろりと一転して、どぶんと荒潮のなかにおちてしまいました??

     2

「あっ、落ちた!」
 大利根博士は、思いがけないできごとに、殺人光線灯のボタンをおすことを忘れて、帆村の落ちた荒びる水面をきょろきょろとながめました。
 大きな水音は、しばらく洞穴のなかを、わぁんわぁんとゆりうごかしていましたが、やがてそれも消えてしまいました。
「ど、どこへ行ったんだろうか。溺《おぼ》れてしまったのか、それとも渦にまきこまれてしまったかな」
 ぼんやり黄いろく光る魚油灯を、海水のちかくへずっとさしだして見ましたが、帆村の頭も見えず、水を掻《か》く音さえきこえませんでした。荒潮のなかに落ちた帆村は、そのままどこかへ姿を消してしまったのです。
 とうとう帆村は、浪にのまれて溺れ死んでしまったのでしょうか。それとも何所《どこ》かに生きているのでしょうか? 洞穴のなかを、荒潮は大臼《おおうす》をひきずるような音をたて、あいかわらずはげ
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