つきあたったとすると、もし、はずみをくらって、更に潮の流へとびこんだものとすると、どうしても岩礁の向こうにおちるはずです。それが左におちたとは、ふしぎなこともあればあるものです。
 つぎに帆村は、大利根博士に頼んで、魚油灯をかしてもらいました。そして岩礁の上をそれで照らしてみました。帆村の考では、岩礁の上に、怪塔王が体をうちあてたときには、きっと血を流したことであろうとおもいました。その血が見つかるといいと思ったのです。
 しかし、ふしぎにも、血らしいものは、岩礁の上に見あたりません。そうかといって、潮が洗い去ったようでもありません。
 帆村は、小首をかたむけました。
(はてな、これは変だぞ!)
 帆村は、ふしぎなかずかずの疑問を大利根博士にたずねようかと思いました。――が、待てしばし!
(どうも、この大利根博士というのが、不思議な人物だぞ。はて、一体どうしたというわけだろう)
 帆村は、ようやくそのことについて思いあたりました。そう思って、前からのことを思いかえしてみると、怪しいふしぶしがたくさん出てきます。
(これは油断がならないぞ)

     4

 油断のならない洞穴の大利根博士です。帆村探偵は、夢から覚めたように、おどろきました。
 そういえば、この大利根博士という人物が、怪塔王のおちた岩の割れ目から入れかわりに出てきたのが変です。いや、それだけではありません、帆村探偵が声をかけたときの、あのへどもどした返事のしかたは、どうも怪しい。
(さあ、この大利根博士は、ただ者ではないぞ。これはたいへんなことになった)
 博士の話によると、怪塔王は岩礁の上におちたというのに、血も流れていません。渦を巻く海水の中を見ましたが、怪塔王の死体も見えなければ、その持物も何一つ浮いていないではありませんか。
 怪塔王が死んだと思ったのは、あの岩の割れ目から、この洞穴の中へ墜落したことと、それから間もなく起った悲鳴でありました。今のところ、それ以上、怪塔王の死をものがたるたしかな証拠はないのです。
(これは油断がならないぞ。下手《へた》をすれば、怪塔王は、まだその辺に生きている! その上、この怪しい大利根博士だ。そして場所は、勝手もわからぬものすごい洞穴の中だ!)
 さすがは帆村探偵です。すぐれた推理をたてて、ついに自分の背後にせまる大危険を察したのでありました。
(これから
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