た帆村が、ついに昨夜やってこなかったということは、兵曹長を不安にしました。ひょっとすると、帆村は昨夜海底牢獄から自分をすくいだしたことを怪塔王にかぎつけられ、そのためにひどい目にあっているのではないかしらんなどと心配しました。
小浜兵曹長は、藁の上からおりて、いつもやりなれている徒手体操をはじめました。連日の奮闘で、体のふしぶしがいたくてたまりません。しかし体操をなんべんかくりかえしているうちに、だんだんなおってきたようです。それがおわると、兵曹長はふかく注意をしながら、そっと窓のところへ寄りました。
そのとき彼の眼は「おやっ」と異様な光をおびました。
2
この見張小屋は、小高い丘のうえの岩かげに立っていました。そこからは、この島の怪塔ロケットの根拠地が、一目に見おろせました。
おそろしい白骨島ではありましたが、朝の風景は、たいへんきれいでありました。目の下の広場に林のように立ちならぶ怪塔ロケットは、全身に朝日を浴《あ》びて銀色にかがやき、いまにもさっと飛びだしそうに、天空を睨《にら》んでいました。
その広場に、ただ一人ぶらぶら歩いている人影がありました。なにか落しものでもしたと見え、背をまるくまげ、しきりに地上をさがしている様子です。なお見ていますと、その人は、深しものをしながら、だんだんこちらへ近づいてくるのでした。
「あの男は、なにを探して[#「探して」は底本では「深して」]いるのだろうか」
小浜兵曹長は、たいへん興味をおぼえ、なおも窓のかげから、その男の行動をじっと見守っていました。
その男はだんだん丘の方へ近づいてきます。
そのうちに、男はふと顔をあげました。小浜兵曹長は、そのときはじめて男の顔を正面から見ることができました。
その瞬間、兵曹長はおもわず、
「あっ、あれは怪塔王だ!」
と叫んで、拳をにぎりました。
「たしかに怪塔王だ。あんな妙な顔をしている人間は、二人とないからな」
それからというものは、兵曹長は、前よりも熱心にこっちへ近づいてくる男の行動をじっと見つめていました。そのうちに兵曹長は唇《くちびる》を一の字に曲げ、
「そうだ。よし、これから出かけていって、怪塔王をつかまえてやろう、あいつはまだ俺がここにいることに気がついていないようだから。うむ、こいつは面白くなった」
と、兵曹長は自分の腕を叩いて、にっこ
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