され、いろいろとおそろしい武器をつかって暴れられてはたまらない。それよりもここは、怪塔王の気づかないうちに、怪塔王が困るようなことをやっておこう。そういう考え方で、帆村はマスクをにぎったまま、その辺にあるいろいろな仕掛などを、できるだけ壊したり外したりしておいたのです。そしてマスクをもって階下におり、鏡の前で怪塔王のマスクをかぶりました。
帆村はすっかり自分を怪塔王に変えてしまったこの巧妙なマスクに、改めておどろきの声を出しました。
3
さても巧妙にできているマスク! 首全体をつつむようにできている最新式の怪マスク!
そのマスクの顔は、世にもおそるべき破壊力の持ちぬしである怪塔王の顔だ!
さていま、帆村探偵は、その怪マスクを手にして覆面《ふくめん》の怪塔王とむかいあっているのです。その怪塔王は、あわれにも帆村のため、両手をうしろにしばられ、手をつかうことができなくなっています。
「さあ、このマスクは一たん貴様にかえしてやるぞ。その代り、こんどは僕のいいつけをきいて、怪塔を横須賀方面へとばせるのだ。いいか」
と、帆村探偵が勝ちほこっていえば、覆面の怪塔王は力なくうなだれ、
「よろしゅうございます。こうなってはあなたさまのおっしゃるとおり、なんでもいたします。私としては、この海底から一刻もはやくのがれたいのです。私の一番こわいのは、海面にうきあがる以前に、この塔ロケットが爆発しやしないかということです」
「水中に永くいると、なぜ爆発するのかね」
ロケットが海中に永くつかっていると爆発すると怪塔王はおそれていますが、帆村はなぜ爆発がおこるのかわけをしらないので、ただ不思議でありました。
「それは、ロケットをうごかす噴出ガスの原料であるところの薬品に、塩からい海水がしみこむと、だんだん熱してきて、おそろしい爆発がおこるのです」
「じゃあ、海水のはいらないようにしておけばいいのに」
「そうはいきません。どうしても金属壁の隙間《すきま》から浸みこんで来ます。さあ、帆村さん、はやくマスクをかえしてください」
「うん、マスクはここにある」
といって、帆村はようやく怪塔王のマスクをさしだしました。
「ああ、私は手をしばられているから、マスクをかぶれやしません。紐《ひも》をほどいてください。ああ、手がいたい」
4
怪塔王にマスクをかえしてやっ
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