たんです。そのとき自分はもう死んでしまって、墓場にはいりこんだのじゃないかと思ったくらいです。あのときはじつにこわかった」
「うむ、そうだったろうねえ」
 と塩田大尉は大きくうなずきました。
「――それからですよ、帆村おじさんの活動がはじまったのは。おじさんは、怪塔の二階をいろいろと苦心してうかがいましてね。怪塔の中には、怪塔王のほかに、妙な筒の中に黒人が住んでいることをさがしあてたんです。黒人は、怪塔王のいいつけなら、どんなことでも素直にはいはいときいて、機械をうまくあやつるのです」
「ほう、そうか。よし、なかなかいいことをしらべてくれた」
「――そのうちに帆村おじさんは、僕をぜひとも逃してやりたいといいました。僕はひとりで逃げるなんていやだとことわったんですけれど、帆村おじさんは、お前が逃げ出して、塩田大尉などに大事なことを知らせてくれないと、怪塔王はいつまでも暴れ、軍艦などに害をあたえるというので、僕はようやくいうことを聞きました。そして帆村おじさんが、鉄の窓わくを永い間かかってこわしてくれたので、その狭いところから、外へとびだしたんですが、そのとき足に怪我をしました」
「もうそれだけかい。帆村君からの言づてはほかになかったかい」
「いや、一つ重大な言づてがありますよ」

     4

「なに、帆村君からの重大な言づてって、どんなことだい」
 と、塩田大尉は一彦の手をしっかりと握って、聞きかえしました。
「それはね――」
 と、一彦はしばらく目をとじて、じっと考えていました。この言づてはよほど重大なことでありましたから、、帆村からいわれたとおりまちがいなく大尉に伝えねばならぬと大事をとっていたのです。
「そうだ、帆村おじさんはこういってましたよ」
「ふむ――」
 と塩田大尉はかたくなって聞いています。
「それはね、大利根博士にぜひ会ってくださいって。そして大利根博士の体に、なにか変ったことがあるかないか、ぜひともそれを調べておいてくださいって、いってましたよ」
「ふん、ふん。大利根博士に会えというんだな。そして博士の体に変ったことがないか調べてみろといったんだね。うむ、よくわかった。やっぱり帆村君は、なかなかの名探偵らしいぞ」
 と、塩田大尉はなにごとかをひとりでもってしきりに感心していました。なにか大尉の胸におもいあたることがあるのでしょう。
 一彦少年の
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