艇長。あなたの顔が――」
と、テイイの叫ぶ声に、はっとしてスコール艇長は気がついた。かれは「しまった」とうなると、手をポケットに突込み、それから緑色のマフラーをつかみだし、くるくるッと自分の顔にまきつけた。
まえばかり向いて説明をつづけていたテッド博士が、このとき気がついて、うしろにふりむいた。
「どうかされましたか。おや、あなたはガスコ氏!」
博士は、ガスコ氏をいいあてた。が、博士の声は、あんがいあわてていなかった。あわてているのは、当の怪人ガスコだった。
「なにをいう。わしはガスコなんて者ではない」
緑色のマフラーのなかで怪人の口が大きく動いた。と、とつぜんかれは、服の下から、針金を輪にしたようなものをとりだし、頭上高くあげた。そしてそれを高く持ったかれの右手はねらいをつけるためか前後へゆれた。その輪こそ、かれがテッド博士の顔めがけて発狂電波を投げかけようとするおそろしい発射器であった。と、かれの左手が服の下へはいった。そこには電波をだすためのスイッチがあった。
かれはそのスイッチをおした。ああ、博士があぶない。
ほえる怪人
とつぜん、この機関室が鳴動した
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