やる」
そういったかと思うと、スコール艇長はいきなり事務長のえりがみをつかんでかるがると宙吊《ちゅうづ》りにした。そしてとなりの浴室の戸をあけて、中へつれこんだ。
それからしばらく、生理的なテイイの声がげえげえと聞こえていたが、そのあとで水がばちゃばちゃはねる音がした。と、戸があいて艇長が事務長を猫の子のようにぶらさげてあらわれ、長椅子のうえにほうりだした。
テイイが死にかかっているようにぐったりしていると艇長はどこから取り出したか、いばらの冠《かんむり》みたいなものを手に持って事務長の頭にかぶせた。そしてその冠のうえについている目盛盤をうごかした。すると事務長は、電気にふれたように、ぴくッとなり、棒立ちになってとびあがった。かれの頭髪は箒《ほうき》のように一本一本逆立ち、かれの目は、皿のように大きく見ひらかれている。
「あ、あ、あ、あ、あッ」
かれは唇をぶるぶるふるわせたあとで大きいくしゃみを一つした。するとかれの頭から冠がぽんとはねあがった。スコール艇長はそれをすばやくじぶんの服の中にかくしてしまった。
「ふふふ。人間というやつは、あわれなもんだて、脳や神経の生理について、
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