#「らくだ」に傍点]に似た東洋人は、首を左右にふって、
「いや、わしは艇長ではありません。事務長のテイイです」
「ははあ、事務長のテイイさんですか。それで艇長に、お目にかかりたいのですが……」
「艇長はこのところ病床《びょうしょう》についていまして、お目にかかれんです。それで艇長はその代理をわたしに命じました。ですからなんなりとわたしにいってください」
そういうテイイ事務長のことばに、ロバート大佐はふまんの面持でうしろの随員のほうへふりかえった。
「すると、ご持病で苦しんでいられるのですか」
そういって聞いたのは帆村だった。
「ええ、そうなんです」
事務長は、するどい目でちらりと帆村の顔をぬすんで答えた。
「胆石病なんですね」
「胆石病――ああ、そうです、胆石病です。あの病気、なかなか苦しみます」
事務長のことばに、なぜかあわてたようなところがあった。
そこでロバート大佐は『宇宙の女王』号のことについて、事務長の知っているかぎりのことを話してくれとたのんだ。
「当局からの依頼の無電によって、わがギンネコ号は、ばくだいなる損失をかえり見ず、指定されたその現場へ急行したのです。そ
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