とでも連絡がつけば、すこしは手がかりらしいものも見つかったであろうが、あいにく検察当局はこれらの人びとに出会う機会がなかった。
「ガスコ氏に似た怪人物の手がかりが見つからない。もっと資料を送っていただきたし」
 そういう暗い報告が、検察当局からテッド博士のもとへとどいた。


   遭難現場近し


 三根夫《みねお》は、音《ね》をあげないつもりであった。しかしとうとうがまんができなくなって、三根夫は帆村荘六《ほむらそうろく》にうったえた。
「おじさん。どうもたいくつですね」
 帆村荘六は、本から顔をあげて、目をぐるぐるまわしてみせた。
「そんなことは、いわない約束だったがね。それにミネ君は、いろんなおもちゃを艇内へ持ちこんでいるじゃないか」
「それと遊ぶのも、もうあきてしまったんです」
 オルゴール人形、パチンコ、車をまわす白鼠《しろねずみ》ども――これだけのものを持ってはいったのであるが、もうあきてしまった。
 白鼠の小屋の掃除をするのが、一番たいくつしのぎになる。といっても、これをいくらていねいにしてみても、ものの二十分とはかからない。
 白鼠は、はじめ七ひきであったが、まもなく
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