して、はりきっていた。
 帆村の姿が見えると、三根夫は手をくるくると動かして、なにか合図のようなものを帆村に送った。
「六号艇ハ絶望ラシイ」
 手先信号で、三根夫は重要なることを帆村に知らせた。
「どうしたの、第六号は……」
 帆村は三根夫のそばへかけよると、小さい声でたずねた。
「いまから五分まえに、後部倉庫からとつぜん火をふきだしたそうです。原因は不明。消火につとめたが、次々に爆発が起こって――燃料や火薬に火がうつって誘爆《ゆうばく》が起こって、手がつけられないそうです。テッド隊長は、『絶望だ』とことばをもらしました」
「わかった。ここはぼくがいるから、ミネ君は部屋へいそいでもどり、ガゼットのカークハム君を呼びだして、いまの話をしたまえ。そしてね。ぼくもあとから連絡するといっておいてね。その連絡がすんだら、きみはもう一度ここへやってくるんだよ」
「はい。そのとおりやります」
 三根夫は、いそぎ足で操縦室をでていった。
 あとには帆村が壁ぎわに立ち、この部屋でいまむちゅうになって働いている人々のじゃまをしないようにつとめながら、悲しむべき第六号艇の椿事《ちんじ》のなりゆきを見まもった
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