ークハム氏にもよく見える。そのかわり、カークハム氏の事務室の光景が、帆村のまえにあるテレビ電話の映写幕にうつっている。
球形の部屋の一つを、帆村と三根夫少年とでもらっているのだ。なぜこの部屋が球形になっているか。その理由はもっと先になるとわかる。
室内の調度は、みんなしっかり部屋にくくりつけになっている。コップ一つだって、ちゃんとゴム製のサックの中にはめるようになっている。そしてそのサックは壁とか机の上とかに、しっかり取りつけてあるのだ。
「この窓も、もう閉めたきりです。だっていつ窓から外をのぞいても、暗黒の空間に、星がきらきら光っているだけのことですからね」
地上から成層圏のあたりまで航行する間は、それでも外が明かるく見えていて、多少なぐさめになった。しかし成層圏を突《つ》っ切《き》ってからというものは、どこまでいっても、暗黒の空間に星がきらきらであった。
もっとも、そのなかにおける一つの異風景は、昼間は暗黒の空間に太陽が明かるくかがやいていることだった。月よりはずっと大きく、もっと赤味《あかみ》のある光りをはなっているんだが、附近の空間は地上で見るような青空でなく、暗黒の空
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