んだ男が、ぎちぎちと松葉杖のきしむ音をたてて通りすぎた。
一同が、そのほうへこわごわと視線を集めていると、いったん通りすぎたかの男は、ぴたりと松葉杖をとめ、それからうしろをふりかえった。肩ごしに、首をぬっとまえにつきだして、かれはしゃがれ声でものをいった。
「おい、お年寄り、あまり根も葉もないよけいな口をきいていると、おまえさんの腰がのびなくなっちまうよ」
「……」
「おれは金鉱のでる山を三つも持っているパンチョという者だ。これからへんなことをいうと、うっちゃってはおかねえぞ」
ぎりぎりぎりと、すごい目玉で一同をねめつけておいて、かれはそこを立ち去った。
あとの一同は、しばらくまた息がつけなかった。スミス老人は、いつまでも唇をぶるぶるふるわせていた。
宇宙通信
「なかなか気持のいい旅行をつづけています」
帆村荘六は救援艇ロケット第一号の中から、ニューヨーク・ガゼット編集局のカークハム氏と無電で話をしている。
「はじめは、このような球形の部屋に住みなれなくて、へんなぐあいでしたが、もうだいたいなれました」
テレビジョン電話で話しているから、この部屋のなかが相手のカ
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