がねえ」
「テンガイだって。それは、どこのこと」
「つまり、天蓋ですよ。空よりもずっと上にあって、この国を包んでいるものですよ。その内側には空気がありますが、外側には空気がないんですよ。つまり天蓋が、境《さかい》になっているんです」
「見たいね。そういう話をきくと、よけいに見たくなる。さあハイロ君。天蓋見物にすぐでかけようよ、ね」三根夫の熱心にまけて、ハイロはついにしょうちをした。ふたりはもとのにぎやかな町へでた。その町をどんどん通り越して、町はずれといったところへでると、一つの妙な建物があった。それはかさが開いた松茸《まつたけ》みたいな建物だった。もっとも屋上はたいらであった。
 その屋上へでると、そこにはかわいいヘリコプターがあった。腰かけに、小型のヘリコプターを仕掛けたようなものであった。これに腰をかけ、肘《ひじ》かけのところにあるいくつかの操縦釦《そうじゅうボタン》をおせば、空中を自由自在にかけまわれるのだった。
 ハイロは、ヘリコプターを二台借りた。もちろんその一台には三根夫をすわらせ、バンドでしばりつけた。ハイロはじぶんの身体にも、もう一台のほうをしばりつけ、かんたんな操縦
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