ついていた。
腕も左右に二本ずつあった。つまり合計すると四本である。
そのうちの二本は、左へ一本、右へ一本とでて、そうとう太い腕に見えたが、これがまた鞭《むち》のようにぐにゃぐにゃしていて、たいへん長くのびていて、伸ばせば床にとどくのではないかと思われた。この太い腕が、れいの小さい胴中からでているところは、肩のような形をしていた。その肩のうしろにあたるところで、首のほうへよったあたりから、左右へ一本ずつの、細い腕がでていて、これはずっとぐにゃぐにゃしており、肩の上のところで、なまずのひげのように、宙におどっていた。それは腕というよりも、触手《しょくしゅ》というほうがてきとうかもしれない。
とにかくその四本の腕の先は、細くさけて、五本ばかりの長い指になっている。
このような怪物が、帆村のうしろについてこの部屋へはいってきたのである。だから三根夫のおどろいたのもむりではない。
「さっさとでていってもらおう」
三根夫は、気味がわるかったが、その怪物につかみかかると、それを外へ追いだした。そして扉をばたんとしめた。三根夫の手に、怪物の奇妙な肌ざわりが残った。それは、いやにつるつるして
前へ
次へ
全239ページ中162ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング