とって極楽世界のように見えるが、よろこんでばかりもいられないんだな。先生はなにかもっと重大なことを知っていられて、わたしに話したいと思っているんだが、それが話せないらしい。よろしいそれではわれわれの手で、怪星ガンの秘密を一日もはやく探しあててやりましょう。先生、もうしばらくしんぼうしてください)
 テッド博士は老師にたいして、心の中でそういった。
 いよいよ別れの握手をしたあとで、博士はもう一言いった。
「先生のひきいていられる『宇宙の女王《クィーン》』号をぜひ見せていただきたいものですね。あすあたりいかがでしょう」
「ざんねんながら『宇宙の女王』号をきみに見せるわけにいかない。あれはもう、この国へ寄附してしまったのだ」
「寄附ですって。それはおしいことをしましたね。それでは先生や隊員たちは、地球へもどるにも乗り物がないではありませんか」
「そうだ。わしはふたたび地球へかえるつもりはない」
「えッ。それはまたどうして……」
「わしは、この国でずっとながく暮らすつもりだ。きみたちもそのつもりでいたほうがいいと思うね」
「いや、わたしどもは、どうしても地球へもどります。それに、このようなふ
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