と買えないんでしょうか」
「そういうものもあるらしいね。たとえば、ほら、あの店に並んでいる額《がく》にはいっている油絵。あれには値段をかいた札がつけてあるよ」
「あ、なるほど。三十五ドルと、値段がついていますね。地球の値段より高いですね」
「ほら、あのとなりには人形を売っている。あれにも値段の札がついている」
「ええ、ついていますね。これはおどろいた」
「三根クン。ぼくたちの目には見えない品物が店に並んでいるとは思わないか」
「えっ、なんですって」
ふしぎなことを帆村がいったので、三根夫は目をぱちくり。
「たとえば、この店にだね、本がならんでいるが、それは店の棚の一部分だ。ほかの棚はがらあきだ。しかしはたしてがらあきなんだろうか。そこには、ぼくらの目には見えない本がぎっしりならんでいると考えてはどうだろうか」
「そうですね。そうも思われますね。本のならんでいるぐあいがへんてこですからね」
「もう一つ、きみは気がついていないか。店には、ぼくらには姿の見えない客が大ぜい、でたりはいったりしているということを」
「なんですって。姿の見えない客ですって」
「そうなんだ。その証拠《しょうこ》に
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