に提供されます」
「衣食住にかんするすべてのものですって。それはうらやましいことだなあ。しかしぼくは市民ではありませんよ」
「いいえ、市民です。この町にいる者は、みんな市民です」
「もう一つおたずねしますが、あなたはどうして姿を見せないのですか」
三根夫が、調子にのって重大な質問をしたとき、入口の戸があいて、帆村が顔をだした。
「三根クン。すぐこっちへでてきたまえ。サミユル博士がお待ちかねだ」
三根夫は、おしいところでその店をでた。
値段札《ねだんふだ》
町は美しく、ならんでいる店はにぎやかに飾られているのに、人通りはまったく見えない。歩いているのは一行五名だけだ。そのように見えるけれど、帆村の推定によると、この町なり通りなりには、大ぜいの怪星ガン人が往来して、ざっとうをきわめているにちがいないという。
帆村と三根夫は、あいかわらず一番うしろにならんで歩いていた。
「ねえ、帆村のおじさん。この町は、地球上のどの国よりも進歩したところですね。だって生活費がただなんだから、暮しに心配いりませんもの」
「生活費がただで、らくに暮らせるというところなら、地球のうえにだって
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