三つにわかれていたが、このときあざやかに美しくその姿を見せた。各艇の乗組員は、それを見ようとして丸窓のところへ集まり、かわるがわる外をのぞいて僚艇の姿をなつかしがった。
 ああ、もしいま六号艇もこの編隊のなかに姿を見せていたら、どんなにうれしいことだろうかと、ゲーナー少佐をはじめ遭難の六号艇の乗組員だった者は、おなじおもいに胸をいためた。
 それにしてもにくいのは、艇内に時限爆弾を仕掛けていった謎の悪漢《あっかん》だ。きゃつは、どうやら社会事業家ガスコ氏に変装し、松葉杖をつき、緑色のスカーフで顔をかくして、テッド隊長たちをあざむいたのだ。『宇宙の女王《クィーン》』号を助けにゆく救援隊のじゃまするなんて、その悪漢はいったいどんな身柄の人物なのであろうか。
 いま、司令艇のテレビジョンの映写幕のうえには、ギンネコ号のすがたが豆つぶほどの大きさにうつっている。ギンネコ号も、このうちの救援隊のほうへ艇首をむけて走っているのだが、あと一時間しないとそうほうは出会えない。
 映写幕を見あげている人びとの中に、三根夫少年もまじっていた。そばに帆村荘六も、しずかに椅子に腰をおろしていた。
「帆村のおじさん。ギンネコ号は宇宙採取艇なんですってね」
 三根夫が帆村に話しかけた。
 帆村は、少年のほうへふりむいて、だまってうなずいた。
「その宇宙採取艇というのは、どんなことを仕事にするロケットなんですか」
「ああ、それはね」
 と帆村はひくいが、しっかりした声で甥《おい》のほうへ口を近づけて語りだした。
「この宇宙には、わが地球にない鉱物などをふくんだ星のかけらが無数に浮かんでいるんだ。その星のことを、宇宙塵《うちゅうじん》と呼んでいる学者もあるがね、とにかく名は塵《ちり》でも、わが地球にとってはとうといもので、宇宙に落ちている宝と呼んでもいいほどだ。ギンネコ号のような宇宙採取艇はそういう宇宙塵をひろいあつめるのを仕事にしているロケット艇なんだ。これは商売としてもなかなかいいもうけになるし、われわれ地球人にとっては、たいへん利益をあたえるものなんだ。つまり地球にない資源が、宇宙採取艇のおかげで手にはいるわけだからねえ」
「じゃあ、隕石《いんせき》を拾うのですね」
「いや、隕石だけではない。もっといいものがいく種類もある。なかには、まだわれわれ地球人のぜんぜん知らない物質にめぐりあうこともある。たとえばカロニウムとかガンマリンなどは、地球にないすごい放射能物質で、ともにラジウムの何百万倍の放射能をもっている。こんな貴重な物質がどんどん採取できれば、じつにありがたいからね。それを使って人類はすごい動力を出し、すごいことができる」
「そんなら国営かなんかで、うんと宇宙採取艇をだすといいですね」
「うん。だがね、そういう貴重な宇宙塵は、なかなか、かんたんには手に入らないんだ、何千か何万かの宇宙塵のなかに、ひとかけら探しあてられると、たいへんな幸運なんだからね。宇宙採取艇で乗り出すのは、昔でいうと、金鉱探しやダイヤモンド探しいじょうに、成功する率はすくないんだ。宇宙塵採取やさんは、世界一のごろつき連中だと悪口をいわれるのも、このように貴重な宇宙塵を見つけだすことがたいへんむずかしいからだ。まあ、そんなところで話はおわりさ」
 帆村荘六の説明は、三根夫をかなり、ふあんにおとしいれたようであった。三根夫は、眉《まゆ》をよせていった。
「じゃあ、おじさん、これからぼくたちが出会うことになっているギンネコ号も、やっぱり宇宙のごろつきなんですね。すごい連中が乗組んでいるんですね」
 そういうすごい連中と、こんなさびしい宇宙でであうなんて気持のいいことではないと、三根夫は思ったのだ。
 すると帆村がいった。
「いや、宇宙採取艇のみながみな、ごろつきだというわけではない。それにギンネコ号なら、たぶんこのおじさんの知っている鴨《かも》さんという艇長が乗組んでいるはずで、あの人は、けっしてごろつきではない」
 それを聞いて三根夫は、やっと安心した。


   宇宙のめぐりあい


 はてしれぬ広々とした暗黒の宇宙だ。その宇宙のなかの一点においてめぐりあう二組の宇宙旅行者だった。
 救援艇隊では、テッド隊長の命令によって、各艇の外側に照明をうつくしい七色の虹のような照明にかえた。各艇は輪になって、そのまん中にギンネコ号を迎える隊形をとった。
 相手のギンネコ号の方は、そんなはでなことをしなかった。艇首に三つばかりの色のついた灯火《とうか》をつけ、『ワレ、貴隊ニアウヲ喜ブ』という信号をしめしただけであった。そしてひどく型の古い艇身に、救援隊側からのサーチライトをあびながら、輪形編隊《りんけいへんたい》のなかにとびこんできたが、そのかっこうはなんとなくきまり悪そうに見えた。
 ギン
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