ちが訪問して親切にあつかわれたことについて礼をのべ、また目下の運命の知れない『宇宙の女王《クィーン》』号について情報をもたらしたことを感謝した。
「なあに、助けあうのはあたりまえのことだ。ましてや外に生物もいないこの宇宙のはてにおいて、人間同志はしたしくするほかない。仲よくしましょう」
 スコール艇長のことばはよかった。しかしかれの本心からでているかどうか、うたがわしい。
 これにたいしてテッド隊長は、どこまでもまじめに相手に礼をいった。そしてこっちもギンネコ号のためにできるだけのべんぎをはかりたいが、もし水や食糧品でもたりなければ、もっとおゆずりしてもいいといった。
「そんなものは、じゅうぶん持っている。おお、そうだ。協力で思い出したが、わしはこのロケットのなかを見たことがない。いいきかいだ。これから案内して、見せてもらいましょう」
 ロバート大佐が、スコール艇長の申し出にあるふあんをおぼえ、テッド隊長に注意をしたとき隊長はにっこり笑って、むぞうさにスコール艇長に答えた。
「ええ、それはおやすいご用です。さあわたしがご案内します」
 といって立ちあがった。
 これはたいへんと、ロバート大佐が隊長に耳うちしようとするのを、しっかり抱きとめた者があった。ふりかえると、それは帆村だった。
「いいのです。そのままにしてお置きなさい」
 と、帆村は目で大佐に知らせた。
 そこでギンネコ号の五名のお客さんを案内して、テッド博士をはじめ、ロバート大佐、ポオ助教授、帆村の四名が、その部屋をでた。まず操縦室から案内することになった。
 スコール艇長は、ひげだらけの顔を上きげんにゆすぶりながら、上下左右へしきりに目をくばり、このロケットの構築《こうちく》ぶりをほめるのであった。それは、かりそめにも害心《がいしん》のある人物に見えなかった。
 しかし帆村はもちろん、ロバート大佐もポオ助教授も、ゆだんはしていなかった。だがこの三人がスコール艇長、じつは怪人ガスコ氏の兇暴《きょうぼう》なる陰謀を知りつくしているわけではないから、危険は刻一刻とせまってくる。


   三根夫の活躍


 艇内を案内されてスコール艇長のガスコ氏が、とくに目を向けていたのは、このロケットの壁の厚さと材料と、その構造についてであった。宇宙レンズで、強力なる宇宙線の奔流《ほんりゅう》をこのロケットにあびせかけたとき
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