飛行機などが敵の戦闘機に追いかけられたとき空中にまきちらす錫箔《すずはく》などをいう。これをまくと、レーダーの電波は錫箔にあたって反射し、レーダー手のところへかえってくる。そしてそのむこうにいるかんじんの飛行機は、空中にひろがる錫箔のかげを利用して、うまくにげてしまうのである。
だからギンネコ号がそれをまけば、かなりひろい空間にわたって錫箔のかべができてしまい、ギンネコ号はそのかべの向うでにげてしまうことができる。つまり、こっちがその錫箔のかべをむこうへつきぬけないかぎり、とうぶんレーダーは何のやくもしなくなるのだった。
テレビジョンの方も、視界がうんと悪くなって、ギンネコ号の姿を見うしなってしまった。
まさに一大事である。
やっぱりギンネコ号はにげるつもりだったんだな。
帆村は隊長テッド博士のところへとんでいって、きゅうをつげた。
「ふーむ。これはもうほうっておけない」
隊長はついに命令を発し、救援艇の第三号と第五号と第七号の三台に、全速力をもってギンネコ号のあとを追いかけ、電波妨害用の金属箔のむこうへ出、状況をよく見て報告するようにと伝えた。
そこで三台のロケット艇は、隊列からぬけると、うつくしい編隊を組んで、ギンネコ号のあとを追いかけた。
だが、彼《かれ》と我《われ》との距離は、いまはもうかなりへだたっていた。だからこの三台の追跡隊が、金属箔のかべのところまでいくには、四時間もかかって、午前五時となった。
ようやく金属箔のかべをつきぬけたのはいいが、そのむこうにまた金属箔のかべがあった。何重にも、それがあったのである。だからそのうるさいかべの全部をつきぬけるには、それからまた二時間もかかった。
「何かご用でもありますか。いそいで本艇を追っかけておいでになったようだが……」
とつぜん追跡隊へ無電がかかってきて、ギンネコ号からのいやみたっぷりな問いあわせであった。
「ええッ」
といって、追跡隊の人たちも、この返事にはつまった。じつに間のわるい話であった。
こっちをからかいながら、ギンネコ号は、いぜんとはうってかわって、いやにきげんがいい。
ふしぎなことであった。
覆面《ふくめん》の怪人物
さすがのテッド博士以下の救援隊幹部も、また名探偵といわれたことのある帆村荘六も、ギンネコ号がひそかにやってのけたはなれ業《わざ》には、ま
前へ
次へ
全120ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング