れには正味《しょうみ》三十五日かかりましたよ。しかもそれからこっちずっとこのあたりを去らないで、あなたがたのおいでを待ったわけですから、本艇はじつに二百日に近いとうとい日数を、なんにもしないでむだにおくったのです。この大きな損失は『宇宙の女王』号の持主か当局かがかならず弁償《べんしょう》してくれるんでしょうね」
テイイ事務長の話は、女王号のことから離れて、じぶんの艇のうけた損失にたいするつぐないを要求する強い声にかわった。
ロバート大佐は、不快をしのんで、それはとうぜん弁償されるでありましょうと答え、そしてこのギンネコ号が現場へきて何を見たかについて話してくれるよう頼んだ。
「それは話さんでもないがね、弁償のことが気になってならんのだ」
と事務長はうたがいぶかい目で大佐を見すえてから、
「この現場へきたが、わたしたちは『宇宙の女王』号の姿を発見することができなかったし、そのほか、その遺留品《いりゅうひん》らしい何物をも見つけることができなかったのです。といって、けっして捜査の手をぬいたわけではない。いく度もいく度も、おなじところをくりかえし探したのだが、さっぱり手がかりなしだ。まことにお気の毒です」
この話によると、ギンネコ号は何の手がかりをもつかんでいないことになる。大佐の失望は大きかったが、気をとりなおし、
「レーダー《無電探知器》で探してみられなかったですか」と聞いた。
すると事務長は、ぴくりと口のあたりを動かし、ちょっといいよどんだ風に見えた。
「レーダーによっても手がかりなしだった。しかし大佐どの。われわれはレーダーを倹約したのではなく、当局から捜査依頼のあった日からきょう貴隊にあうまでの二百日ほどの長期間にわたって、レーダーを一秒間たりとも休めないで捜査をつづけたのですぞ。そのけっか、本艇では高価なるブラウン管を二十何本、いや三十何本かを、とにかくたくさんのブラウン管をだめにしてしまった。この代価もぜひとも払ってもらわねばしょうちできんです」
どこまでいっても、よくばった話ばかりであった。
黒バラの目印《めじるし》
大佐は随員と協議した。
とにかく、きょうはこれで引きあげることにしようではないかと決まった。
そこで帆村から、お土産の贈り物である新雑誌[#「新雑誌」は底本のママ。文脈からは「新聞と雑誌」と思われる。]と果物の
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