でいるところを、二十四時間テレビジョンで放送してくれなどという注文があるくらいだ。新聞記事のほうでも、二面全部をこんどの事件に使っているよ。それでも読者は、まだ報道が少ないとふへいをいってくる」
「なるほど、近頃まれなるかんしんのよせぶりですね。しかしそのわりに、われわれの現場到着はひまがかかるので、みなさんにしびれを切らしてしまいそうですね」
「それはその通りだ。だから一刻もはやく現場へ到着してもらいたいものだ。このあと、ほんとに一カ月半ぐらいかかるのかね」
「そういっていますね、うちの艇長が……」
「これから一カ月半を、どうして読者をたいくつさせずに引っ張っていくか。これはうちの社のみならず各社各放送局でも気にやんでいる。だからねえ帆村君。その間に、なにかちょっとした事件があってもすぐ知らせてくれるんだよ。そしてじぶんの部屋なんかにあまり引きこもっていないで、操縦室にがんばっていて、首脳部の連中のしゃべること考えることをよく注意していてもらいたいね」
「それは、やっていますから安心してください。今、操縦室には三根夫ががんばっていますよ。ぼくと交替で、かれがいま部署についているのです」
「三根夫少年だろう。少年で、首脳部の連中のいっていることがわかるかね」
「あれは勘のいい少年だし、ぼくがこれまでにそうとう勉強させてありますから、大事なことはのがさないでしょう」
「そうかしら。なんだか心配だぞ」
 そういっているときであった。艇内電話のベルがけたたましく鳴りひびいた。帆村は手をのばして、卓上から電話機につづいている紐線《ひもせん》をずるずると引っ張りだし、そのはしを耳の穴に近づけた。紐線の端には、線とおなじ太さの受話器がついていた。
「ああ、ミネ君か。……えッ、なんだって。第六号艇がおかしいって。故障? えっ、火災が起こった。爆発のおそれがあるって。それはたいへんだ。ぼくは、そっちへすぐゆくよ」
 帆村は受話器をもとへもどして、立ちあがりざま、テレビ電話の映写幕のなかに録音器を抱きあげて目を丸くしているカークハム氏にいった。
「わかったでしょう。三根夫はなかなか使えるじゃありませんか。ではぼくは操縦室へゆきます。あっちからあなたにあらためて連絡します」
 帆村はいそいで部屋をとびだした。


   刻々危険せまる


 三根夫少年は、操縦室の壁ぎわに、頬をまっ赤に
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