上、手のとどきそうなところに、謎の構造をもった天蓋の、その裏側が見えるのだ。
はるかに下の町から仰いだところでは、天蓋は、灰色または青色の布を張ったように見えていたが、こうして近くにきて観察すると、そんなやすっぽいものではなかった。それはすこぶる大きな軽金属製、あるいは樹脂《じゅし》製と見えるだだっ広い天井が、はてしも知れずひろがり続いているのだった。それはたいへんしっかりしたものに見えた。
その天井の下には、やはりおなじ色の吊《つ》り橋《ばし》が、網《あみ》の目《め》のように、縦横《じゅうおう》にとりつけられ、どこまでものびていった。吊り橋は、天井から十メートルほど下にあり、パイプを組立てたような構造ではあったが、なかなかの偉観であった。しかもこの吊り橋を、天井の偉大さにくらべると、まるで講堂の天井に、小さい蜘蛛《くも》の巣《す》がかかっているほどにしか見えなかった。
「三根夫さん。もうちょっと向うへいったところで、あの吊り橋へ下りましょう。ゆっくり飛んで、ついていらっしゃい」
案内者のハイロが、ひとり乗りの豆ヘリコプターを三根夫のそばへ近づけて、そういった。
「ハイロ君。あの天蓋を外へぬけられないのかね。ぼくは、天蓋の外へでてみたいんだがね」
それは三根夫がじぶんの使命をはたすために、ぜひそうしなくてはならないことだった。
「それは、吊り橋へ着いてからあとのことにしてください。誰にも知られないで、あの吊り橋へあがることは、ひと苦労なんですからね。とにかく、わしのするとおりに、ばんじをやってください」
「さあ、速度をおとして……」そういってハイロは、きりきりと上へのぼっていった。
いよいよ天井は近くなった。吊り橋にヘリコプターのプロペラがぶつかりそうだ。ハイロは、巧妙に飛んでいる。三根夫は、そのとき、一つの発見をした。
「ははあ、あれが桟橋《さんばし》だな」
それは二、三十メートル前方に見えてきた環状《かんじょう》になっている吊り橋だった。そこには、四方からのびてきた吊り橋が、丸い環状の吊り橋をささえているのだった。どうもその環状になった穴のところへ、下からヘリコプターがのぼってはいるのではないかと思った。
まさに、そのとおりだった。ハイロはうしろへふりかえって、三根夫に合図をすると、ずうッとその環のなかへはいってのぼっていった。三根夫が見ていると、
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