なくてはならないであろう。地球人類の頭脳と科学力とでは、とてもやれないことだ。三根夫は、怪星ガン人の智能の深さと大いさに、いまさらながらおどろかされた。
(このようなガン人に打ちかって、われわれテッド隊員が、うまく怪星ガンから脱出することがはたしてできるであろうか)それを考えると、三根夫は気がめいってきた。


   問題の天蓋《てんがい》


 三根夫が、へんな顔をして、ふさぎこんでしまったので、ハイロは心配して、声をかけた。
「誰でも、動力室を見ると、気がふさぐものです。それは、もし動力室がこわれたら、われわれはどうなるかなあという不安が、誰の心にも起こるからです。まあ心配しないほうがいいですよ。この国にも、そのほうの専門家がたくさんいるんだから、動力室のことはその人たちにまかせておくことですよ。そしてわれわれは、もっと楽しいことばかり考えるのがいいんです」
 そういうところを見ると、ハイロもやっぱり動力室見学は、愉快なことではないらしい。
「ハイロ君のいうとおりだ。はやくここをでて、もっと愉快なところを見物させてくれたまえ」
「さあ、愉快なところというと、どこにしましょうか。映画見物か、それとも音楽会へいってみますか」
「いやいや、そんなところは、いつでも入場できる。きょうは、めったに見られないところを見物したいのだよ」
「それでは、どこがいいでしょうね」
「そうだ。ずんずん上へあがって、この国の一番外側へでて見たいね。さあ、そこへつれていってくれたまえ」
「うーん。それは……それはちょっと厄介《やっかい》だなあ」ハイロは、困ったという顔をした。しかし三根夫としては、怪星ガンの一番外側へでて、そこがどんなになっているかを見てくることが、予定のなかにはいっていた。なんとしても、それを知る必要がある。
「だって、ぼくはぜひ見物したいのだもの。ねえ、ハイロ君。ぜひつれていってよ。はじめのやくそくで、どこにでも案内してくれるはずだったね」
「でも、あそこへいけば、かならずつかまって、取調べをうけるにきまっているんですからねえ、そうすると、化《ば》けの皮《かわ》がはがれますから、えらいことになりますよ」
「ここに南京ねずみが十ぴき、そっくりそのままになっているから、これを使用すればいいさ。さあ、つれていってよ」
「天蓋見物《てんがいけんぶつ》は、よしたほうが安全なんです
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