え、しゃべっていますか。どうせ怪しい奴のいうことだ、ろくなことではあるまい」
出入口当直員は、耳をすまして、扉のむこう側の声を聞きとろうとした。
と、そのとき、外の声が一段と大きくなった。
「この扉を開いてください。お話したいことがあります」
そういうことばが、いくどもくりかえされていることがわかった。
ていねいなことばだ。しかしいったい何者がしゃべっているのだろう。
その声は、司令室や操縦室の高声器《こうせいき》からもはっきりでていたので、いあわせた者は、みんなそれを聞くことができた。
「帆村のおじさん。本艇の外へやってきたのは誰でしょうね」
「誰だと思うかね」
「あれじゃないでしょうか。ほら、おそろしい顔をしたガスコ。ギンネコ号の艇長だといって、きのうここへはいってきたあのいやな奴」
「そうではないと思うね」
帆村は三根夫の説にはさんせいしなかった。
「おじさんは、誰だと思うんですか」
「怪星ガンの住人《じゅうにん》じゃないかと思うね」
「えっ、怪星ガンの住人ですって。それはたいへんだ。いよいよぼくらを牢《ろう》へぶちこむか、それとも皆殺しにするために有力な軍隊をひきいて乗りこんできたのでしょうか」
「ミネ君は、このところ、いやに神経過敏《しんけいかびん》になっているね。それはよくないよ。もっとのんびりとしていたほうがいい」
「だって、こんなふしぎな目、おそろしい目にあって、えへらえへらと笑ってもいられないですよ」
「とりこし苦労はよくないのさ。ぶつかったときに、対策を考えるぐらいでいいのだ。一寸さきは闇というたとえがある。先のところはどうなるかわからないんだから、それを悪くなった場合ばかり考えて、びくびくしているのは、神経衰弱をじぶんで起こすようなもので、ためにはならないよ」
「じゃあ、あの扉をあけて、外に立っている怪星ガンの人間の顔を見たうえで、対策を考えろというんですか」
「それくらいでも、この場合は、まにあうのだ。なにしろぼくたちは、すっかり自由というものをうばわれているんだから、ふつうの場合とちがうんだ。とにかく相手は、あのようにていねいなことばで呼びかけているんだから、ぼくたちを殺すとかなんとか、そういう乱暴は、すぐにはしないだろう」
そういっているとき、テッド隊長が、帆村のほうへ声をかけた。
「帆村君。いまみんなの意見を集めているんだ
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