葉のように飜弄《ほんろう》せられるシグナルでありました。
僕は急に頭脳が冴《さ》え返ったのを覚《おぼ》えました。僕は直《す》ぐ様《さま》ローカル・オスシレーションの方を調節して見ました。カップリングを静かに変えて見ました。グリッド、リークを高めてみました。その結果はどうでしょう。僕が今まで出していたよりも尚《なお》一メートル程短い波長のところで受話器には小さい乍らも、立派に呼出符号と救助信号とを打っていることが聞きとれるではありませんか。
僕は夢ではないかと驚きました。何は兎《と》もあれ僕はスウィッチを直ぐ様、送信機の方へ切換えると「応諾《おうだく》」の符号を送りました。波長は四・五メートルを指していました。
軈《やが》て相手からは、生々《いきいき》とした返事がありました。其のシグナルはまことに微弱《びじゃく》である上に、波長が時々に長くなったり短くなったりして僕の聴神経《ちょうしんけい》を悩ませました。しかし相手の報じて来る内容が少しずつ判明《はんめい》して来ると共に、僕は全身の血潮が爪先から段々と頭の方へ昇りつめて来るのを感じました。耳は火のようにほてり、鼓動《こどう》は高鳴
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