したいと思うから憲兵隊の人に出て貰って呉れというのでした。僕は丸本少佐にこの旨《むね》を申しますと少佐は直ちに阿佐谷通信中尉に通信方《つうしんかた》を命じました。
阿佐谷中尉は、直ちに私に代って通信席に就《つ》きました。丸本少佐に司令を受け乍ら受信が続々と行われました。何事《なにごと》をセントー・ハヤオから聴いているのか、又何事をセントー・ハヤオに打電しているのか、それは僕には少しも判りませんでした。何故《なぜ》ならば、僕が同伴して来た三人の将校達は、多分《たぶん》仏蘭西語《フランスご》と思われる外国語で話をしつづけました。幸《こう》か不幸《ふこう》か、仏蘭西語は僕には何のことやら薩張《さっぱ》り意味が判りません。唯三人の将校の顔面筋肉が段々と引きしまって来て、其の顔色は同じように蒼白化《そうはくか》し、其の下唇は微かに打ちふるえて来るのを看取《かんしゅ》することが出来ました。
四五十分に続く通信が終ると、阿佐谷中尉は僕を招きました。セントー・ハヤオが僕に話したいことがあると言うのです。僕は、永いこと無理やりに距《へだ》てられた恋人同志が会うときのように胸をわくわくさせて受話器を取
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