衰減《スイゲン》セザルヤ」
僕「ヤヤ衰減シタルヨウニ思ウ。予ハ一切ヲ直チニ其筋ニ急報スベシ。次回ノ通信ハ約二時間後、スナワチ午前四時ニ行ウベシ。貴局ノ都合如何」
相手「応諾。当方ハ此後ノ通信ヲ倹約《ケンヤク》セザルベカラズ。電源ノ消耗《ショウモウ》ト、更ニ急報スベキ事件ノ発生ヲ予期スレバナリ」
僕「デハ御機嫌ヨウ。貴君ノ忍耐ト奮闘《フントウ》トヲ祈ル」
[#ここで字下げ終わり]
 僕は最後の符号を打ち終ると急いで立ち上った。壁にかけてある制服を下ろすと、手早《てばや》く之《これ》に着換えました。それから一散《いっさん》に家を飛び出して更けた真夜中の街路に走り出でました。火のように上気した僕の頬を夏の夜乍ら冷々《ひやひや》と夜気がうちあたるのを感じました。
 僕は我国を覘《ねら》っている敵国人が、我国の人跡《じんせき》稀《まれ》なる山中に立て籠《こも》っていると聞いてさえ驚かされたのに、彼等はどこから運搬したものか大仕掛の土木工事《どぼくこうじ》を行い、而も工事は既に終ったという説をセントー・ハヤオなる人物から報ぜられて全く昂奮《こうふん》してしまいました。軍事施設について智識《ちしき》
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