差した。それはどうやら太陽の光りではなく、電灯の光りのようであった。もし八十助が、瓦斯《ガス》マスクをかけられていなかったなら、このときプーンと高い土の香りを嗅いだことであろう。たとえば掘たての深い地下|隧道《とんねる》をぬけてゆくときのように。
そこへ、ヒソヒソと、人間の話し声が聞えてきた。何を云い合っているのか、一向に意味がわからない。そうこうしているうちに、棺桶は人間の肩に担《かつ》がれたようであったが、ゴトンと台の上らしいところへ載せられた。そして間もなく、シュウ、シュウという音響が聞えて来て、青い光芒が棺の隙間から見えた。
「クックックッ」
「はッはッはッ」
人を馬鹿にしたような高い笑声が、棺の外から響いて来た。八十助はハッと身を縮めたが、次の瞬間、ベットリと冷汗をかいた。どうやら棺の外からX光線をかけたものらしい。X光線をかけると、棺の中は見透しだった。彼が生きて藻掻いているところも、骸骨踊のように、棺外の連中の眼にうつったことであろう。それで可笑《おか》しそうに笑ったのに違いない。
「おうーい、甲野君。聞えるかネ」
と鼠谷のしゃ[#「しゃ」に傍点]枯れ声がした。
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