めかけている人までが、親切な先生が、とおく来てくれたことを感謝した。
その時、お医者さまの話では、千蔵がここにかつぎこまれて後ずっと人事不省《じんじふせい》になっていて、いくら注射をしても、気がつかないので、困っているということだった。
「それは、困りましたねえ」
と、新田先生も、おなじことを言った。
お医者さんは、千蔵の脈をじっとかぞえて首をかしげていた。
氷ぶくろを持って来たり、こまごました用事をしていたのは、千蔵の家のとなりに住んでいる佐伯さんという人だったが、彼は、新田先生に向かい、
「この千蔵さんは、天狗岩の上で、ひっくりかえっていたんです。あのとおり大怪我をして、虫の息だったんです。出血多量というやつで、今朝がたに輸血までしたのですが、ここらで気がついてくれればいいのですがねえ」
と言った。
それを聞くと、新田先生は、
「では、千蔵さんは、なぜ怪我をしたか、まだそのわけを、だれにも話していないのですか」
「そうです。なにしろ千蔵さんが、人事不省のままここへかつぎこまれたのですから、よくわからないですが、とにかくお聞きでしたろうが、火柱にやられたらしいと噂していま
前へ
次へ
全636ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング