あのようなひどいことをやったんです。ですが先生、僕は、あの丸木という人が、どうもただの人間でないと思うのです」
「ただの人間でないと言うと、どんな人間だと言うのかね」
「火星のスパイじゃないかと、思うのです」
「えっ、火星?」
新田先生は、いきなり火星が飛出して来たので、目をまるくした。
「火星? 火星のスパイとは、一体それは、どういうことかね」
新田先生は、目をまるくして、千二の顔をじろじろと見た。
「先生、これは、僕がいくら警視庁の人に話をしても、誰も信じてくれないことなのですが、二、三日前の夜、僕の村へ、火星の生物が、やって来たらしいんですよ」
「なに、火星の生物がやって来た。ふん、そうかね。それで……」
新田先生も、この話には、ちょっと困ったようであった。いくらなんでも、火星の生物が、この地球にやって来るなんて、そんな突拍子《とっぴょうし》もないことは考えられないからである。
しかし千二は、熱心に、そのことを語り出した。
あの湖水《こすい》へ、夜おそく、うなぎを取りにいったこと、妙な音が聞えたこと、光り物がしたこと、うす桃色に光る塔のようなものが、天狗岩の上に斜に突立
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