た。
残った店員たちは、この烈しい丸木のけんまくに、すこしおそれをなして、後へひきさがる。
その間に、丸木は、薬の壜を並べた棚のところにとんで行って、壜の上にはってあるレッテルを一々見ては、ちがっていると見えて、かわるがわる両手につかんで、店員の方へなげとばす。劇薬も毒薬もあったものではない。さわぎは、ますます大きくなった。
そのうちに、丸木は、大きな声でさけんだ。
「ああ、あった。ボロンの壜があったぞ」
と、丸木は、その場におどりだした。
その時、丸木の後頭部めがけて、野球のバットが飛んで来て、ぐわんと大きな音をたてた。店員の一人が、この乱暴者を静かにさせるため、ありあわせのバットで、丸木の後から、なぐりつけたのだった。
だが、丸木は、それには一向驚かなかった。そうしてボロンの壜を大事そうに、幾度もなでまわした。
「あれっ、こいつ! びくともしないぞ。へんだなあ」
店員は、もう一度力まかせに、バットを振って、丸木の頭をなぐりつけた。丸木の頭は、ぐわんといった。そのはげしい音では、頭が破《わ》れたかと思ったが、やはり丸木は平気だった。しかし、どうしたわけか、その時から丸木
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