先生もおなじようなことを言った。
そのうちに、どうしたわけか、あたりが急に暗くなった。
「おや、暗くなったぞ」
千二少年は、ガラスが、どうかしたのかと思って、服の袖でしきりにガラスをふいた。
だが、そんなことは、一向ききめがなく、だんだんと暗さがました。
「おやおや、火星が見えなくなってしまった。いままで、あのように美しくかがやいていた火星が、急にすがたを、けしてしまった。先生、これは一体どうしたわけですか」
すると、新田先生は、しずかにうなずき、
「千二君。窓ガラスをよく見たまえ」
「え、窓ガラスですか」
「ガラスの上に、何か見えないかね」
「さあ。――」
と言ったが、千二が見ると、外からガラスの上を、なんだか黒い粉のようなものが、ふきつけている。
「ああ、この黒い粉みたいなものは、何でしょう」
「わかったかね。それは火星塵だ。つまり、火星のまわりを、こまかい塵の層がつつんでいるのだ。それを火星塵の層といっているが、いまわれわれは、その塵の層のまん中に、はいったのだよ。だから、まっ暗なんだ」
「ああ、そうですか」
千二は、なんだか、たいへん心ぼそくなった。まっ暗な井戸
前へ
次へ
全636ページ中570ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング