島《しま》天文台
日毎夜毎《ひごとよごと》に、モロー彗星《すいせい》のすがたは怪しさを加えていった。
今では、彗星の大きさは月をはるかにしのいでしまった。空を見上げると、まるで大きな光る飛行船を天に張りつけたようであった。
モロー彗星の距離は、地球から月までの距離の何十倍ぐらいかのところまで近づいたのであった。あのすばらしい速さでもって、モロー彗星は間もなく月の側を通り越し、地球の正面へどうんとぶっつかるはずだった。
人々は、もう殆ど全部が、おかしくなってしまった。もうあと七日足らずの生命だというので、変な遊びに熱中しているあさましい人間が町にあふれていた。そうかと思うと、中にはせっせと働いている者もあった。庭に一生けんめいに朝顔の種をまいている者があったり、町から投売の安い品物を買って来て、一生けんめいに納屋《なや》へしまいこんでいる者もあった。彼らはたいへん落着いて働いているようでありながら、その実は、やっぱりおかしくなっていたのだ。なぜと言って、朝顔の種をまいてみても、その花が咲くのは夏時分になる。夏までこの地球がもてばいいが、あと数日で崩壊してしまうのだから、彼のや
前へ
次へ
全636ページ中446ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング