人などに売ってしまっているのであろう。すると、博士はまず鬼だと言ってよろしかろう。そういう博士の心を、自分の手で、何とかいい方へ直せると思っていたのは、たいへんばかだった!)
 新田先生は、そう思って、顔をつたって落ちるくやし涙を、とどめることが出来なかった。
「博士、私はいよいよ博士にお別れして、ここを出ていきます」
 先生は、ついにそう言った。もうこんな所にとどまることは出来ない。いくらここにいても、むだである。博士は、地球人類のために力を貸そうとはしないのである。
「今になって出ていくか。いよいよこの恩知らずめが!」
 博士は、口ぎたなく先生をののしった。先生は、すっくと立上った。一分間でも、こんなところにいては、身のけがれだと思った。
 ところが、その時、思いがけないことが起った。それは、何であったか?
 博士が、いきなり新田先生の手を、ぐっと握ったのである。
「あっ!」
 新田先生は、びっくりした。博士の心をはかりかねて……。
 その時、博士の唇が、先生の耳もと近くにあった。
「新田、だまって、わしについて来い!」
 博士は、聞取れないほどの小さい声で先生の耳にささやいた。

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