の人類の不安は、モロー彗星の大きさとともに増していった。町には気が狂った人が、だんだん人数を増していった。
しかし、一部の人間はおちついていた。すっかり覚悟をきめてしまったのであろうと思われるが、いつものように平然として仕事をつづけていた。
その人たちが言っている話を、横あいから聞いてみると、こんな風であった。
「どうです、モロー彗星も、だいぶん大きく見えるようになりましたね」
「そうですねえ。あなたは、どちらへ御ひなんなさいますか」
「いいえ、べつにひなんはいたしません。このままにしています」
「ははあ、どうして、ひなんなさらないのですか」
「いや、さわいでも、どうなることでもないのです。何しろ相手は彗星ですからねえ。我々に、彗星を動かす力があればともかくもですが、そんな力はないのですから、後はもう自然の成行にまかせておくよりほか仕方がありません」
「たいへんおちついておいでですね。しかし、死ぬことはおいやでしょう」
「べつにいやとも思いません。いやだと思っても、どうなることでもないのですから。それよりも、わたしは、たいへん楽しいことに思っています。つまり、地球は生まれてから八十
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