「そうですよ。今にあれがどんどん大きくなって、月よりも大きくなるそうです」
「もしもし、月よりも大きくなるどころじゃありませんよ。彗星は自分で光っているんですから、太陽よりも明かるくなりますよ」
「ほんとうですか。あれは自分で光っているんですか」
「そうですとも。今に空いっぱいに彗星がひろがりますよ」
「ええっ、何ですって」
「つまり、空というものが見えなくなってしまうのです」
「えっ、よくわかりませんなあ」
「さあ、どう言ったらいいか。つまりですな、空が見えなくなって、その代り彗星の表面ばかりが見えるようになるでしょう。その時は、他の星は全く見えなくなりますよ」
「へええ、驚きましたなあ。太陽も月も見えなくなるのですか」
「そうですとも。太陽も月も、地球から言うと、モロー彗星の向こう側になってしまうのですからねえ」
 俄か天文学者が急にふえた。
 モロー彗星が肉眼で見え出すと、騒ぎは、いよいよ大きくなった。
『モロー彗星対策相談所』とか、『延寿相談所』などという珍妙な看板が、どこの都会にも、十や十五はあらわれた。
 人々の中に、何とかしてこの際、自分たちの命を全うしたいものと思い、
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